相続・遺言
父が亡くなり、母も他界しているため、相続人は兄と私の2名でした。兄の財産目録を信じて遺産分割協議を行い、半分の金銭を受け取りました。兄が相続税申告も済ませてくれたため、手続きは終了したと思っていました。しかし、先月税務署から、父の口座から兄が1000万円を自分の口座に移していたと判明し、その金額を相続財産に加え、修正申告と追加の相続税を支払うよう求められました。取り分を主張できるのか、また追加の相続税を支払う必要があるのでしょうか?
事例のご紹介です。
【相談内容】
相談者の父が2年前に亡くなりました。母親は既に亡くなっているので、相続人は兄と相談者の2名です。亡くなった父は鹿児島県在住で、兄と暮らしていたため、相談者は財産状況について全く分かりませんでした。
そこで、相談者は、兄が提出してきた財産目録を信じて、一度、遺産分割協議を成立させ、半分の金銭を受けとりました。さらに、その遺産分割協議に基づいて、兄の方で、税理士に依頼をして相続税申告をして納付まで終わらせてくれたため、父の相続の件はもう終了したと思っていました。
ところが、先月になって、税務署から「父の生前に、父名義の口座から兄がお金を下ろして自分名義の口座に1000万円を入れていた。そうだとすると父の相続財産について1000万円ほど加算して計算すべきということになる。この分について修正申告して追加の相続税を支払って欲しい。」という連絡がありました。
相談者からは、「一度、遺産分割協議をしてしまった以上、もう兄が持って行ったという1000万円について取り分を主張することは出来ないのでしょうか?また、お金ももらっていないのに追加の相続税を払わなければならないのでしょうか?」という相談がありました。
【弁護士の対応】
まず、以前の遺産分割協議においては、兄が目録を出してきて、それを信じて2分の1ずつ分けたという話だったので、今回の1000万円については、前回の遺産分割協議にて話し合われていないと考えました。そこで、本件について弁護士が介入し、新たに発覚した1000万円の2分の1=500万円を渡すよう兄に対して請求しました。
【結果】
兄の方にも弁護士がつき話し合いをしましたが、税務署の調査により1000万円が父の口座から兄の方に移転していることが明らかになった以上、相手もその点については争いませんでした。そこで、500万円を依頼者に渡すことを前提に、増えた分の相続税は、双方折半する(但し、延滞税は兄が全額負担)ということで、再度、遺産分割協議を結ぶことが出来ました。
最終的には、税務署から連絡が来てからわずか3ヶ月で再度の合意ができ、スピード解決に至りました。
【弁護士所感】
本件は、一度、遺産分割協議が成立した後に、さらに隠し財産が発覚したケースです。前回の遺産分割協議において、こうした隠し財産が問題となっていて、それを前提にある程度の数字で合意したというのであれば、今回新たな請求は難しかったところです。もっとも、前回の遺産分割においては、兄が遺産目録を作成し、それを信じて依頼者はサインをしたため、依頼者は兄によるお金の引き出しなど知り得ない状態でした。
そこで、前回の遺産分割協議ではこの点について触れられていなかったとして、今回、新たな遺産分割協議を成立させることが出来ました。
このように事案によっては、後から財産が発見されたとしても、請求できる場合と請求出来ない場合があります。ご不明点がありましたら、まずは、当事務所の弁護士に相談いただければと思います。