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相続・遺言

よくあるご質問

父は不動産を複数持っており、戸建ての建物を父の知人に貸していました。役所から連絡があり、どうやら半年ほど前に賃借人が亡くなっており、現在、空き家になってしまっているということでした。まずは、賃借人の相続人に連絡をするよう言われましたが、役所は相続人の連絡先を教えてくれませんでした。私は賃借人の方と一度もお会いしたことがなく、相続人ももちろん把握していません。どうすればよいですか?

弁護士からの回答

事例の紹介です。

【相談内容】
数年前、父が亡くなり、私が遺産を相続しました。

父は不動産を複数持っており、戸建ての建物を父の知人に貸していました。父が若いころに世話になった方のことで、かなり安い賃料で、年に2回、半年分の家賃をまとめて支払うというような契約をしていたようです。父が亡くなってしばらくの間は家賃の振り込みがあったのですが、前回分の振り込みがありませんでした。父から聞いていた電話番号に何度か電話したのですが電話に出ず、お手紙を送ったりもしましたが、返事がありませんでした。私も仕事が忙しくなかなか様子を見に行くこともできず、数か月経ってしまったのですが、先日、役所から連絡があり、どうやら半年ほど前に賃借人が亡くなっており、現在、空き家になってしまっているということでした。

賃借人が亡くなってしまったなら、建物を取り壊して、新しくアパートを建てたいと考えたのですが、建物中には賃借人の私物が多数あり、勝手に処分することはできないと役所からは言われてしまいました。また、役所からは賃借人に相続人がいる場合、そもそも賃貸借契約が継続するとも聞きました。その上で、まずは、賃借人の相続人に連絡をするよう言われましたが、役所は相続人の連絡先を教えてくれませんでした。私は賃借人の方と一度もお会いしたことがなく、相続人ももちろん把握していません。どうすればよいか悩んで相談に来ました。

【弁護士の対応】
賃貸借契約に関しては、賃借人が死亡したからといって自動的に賃貸借契約は終了せず、賃借人の相続人が賃借人の地位を相続します。

賃借人に相続人がいれば、相続人と交渉し、賃貸借契約の終了と、私物の撤去(原状回復)を求めることになります。もし、賃借人に相続人がいない場合(法定相続人全員が相続放棄をしてしまった場合も含みます。)には、家庭裁判所に対し相続財産清算人の選任申立てを行い、相続財産清算人のもとで処理を進めることになります。このように、相続人がいるかどうかで大きく方針が異なるため、まずは、当事務所においては相続人調査からスタートし、その結果次第で、依頼者と改めて方針を検討することなりました。

【結果】
相続人調査の結果、賃借人には相続人として、子2名がいることが分かりました。もっとも、戸籍上、子2名は幼い頃に賃借人と配偶者が離婚し、配偶者に引き取られていたため、賃借人とはあまり交流がなく、賃借人の死亡を知らないことが推測されました。

もし、賃借人の子2名が賃借人と長年交流がなく、賃借人の死亡を当方からの連絡で初めて知った場合、未払いの賃料や賃借人の私物の撤去等を求めると、子2名が、面倒ごとに巻き込まれたくないと考えて相続放棄をしてしまう可能性がそれなりにありました。

一方、相続人調査の結果、賃借人には多数の高齢のきょうだいがいることが分かっていましたので、仮に賃借人の子2名が相続放棄をしてしまうと、相続人が多数に及ぶことになり、事案の解決にかなりの時間がかかることになります。

そうした状況を整理した上で、依頼者と相談したところ、

「相続人が多数に及んで、解決に時間がかかることは避けたい。子2名が相続放棄を選択しないよう、未払賃料の請求もしなくていいし、賃借人の私物の処分費用もこちらで負担しても構わないという提案をしてほしい。」

との意見だったため、子2名に対し、

①賃借人が亡くなったこと、

②賃貸人側で建物内の動産の処分費用はすべて負担するし、未払賃料も請求しないので賃貸借契約については合意解約してほしい旨記載した書面と、

③建物内の私物を賃貸人で処分することを内容に含めた賃貸借契約の合意解約書等

の必要書類を合わせて送付したところ、子のうち1名から連絡があり、詳細を電話で説明しました。もう1人のきょうだいと相談するとのことでしたが、その後、2人から①、②の処理で問題ないとして、③2名の署名捺印済みの合意解約等の書類の返送があり、無事、賃貸借契約の合意解除、賃借人が遺した私物の処分ができました(その後、新しいアパートを建てたと聞いております)。

【弁護士所感】
不動産業者などを間に入れずに、親の代で開始した賃貸借契約などにおいては、賃借人が亡くなった際に相続人の有無・いる場合の連絡先が分からないということがよくあります。賃貸借契約は賃借人の死亡によっては当然に終了せず、相続人に賃借人の地位が引き継がれます。一方、相続人が不在の場合には相続財産清算人の申立て等を検討する必要があります。このように賃借人に相続人がいるかどうかによって、その後の方針(対応)が大きく異なってきます。

そして、相続人がいた場合には、賃貸借契約を継続するのか、賃貸借契約を合意解除するのか、速やかに協議をする必要があります。

今回のケースでは、依頼者が早期解決を望んでいたことから、本来、賃借人が負っている原状回復義務について、依頼者にて、建物内の動産の処分費用を全額負担するとともに、未払賃料も請求しないという内容を提案した結果、早期に解決をすることができました。

建物の賃貸借契約において、賃借人が亡くなってしまった場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

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